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リプロ・ニュース No.9(2025年8月発行)

RHRリテラシー研究所


────◇◆◇コンテンツ◇◆◇────────────────────

  1. 世界のリプロ・ニュース(2025年5〜7月)

  2. 政治の転換点?――野党過半数と「リプロ政策」の可能性

  3. 『中絶薬完全ガイド 第二版』刊行のお知らせ

  4. 「わたしの体は母体じゃない」訴訟:非公開協議

  5. Call4実話記事:司法と語りのギャップ

  6. ボランティア・スタッフ随時募集中!

編集後記:語ることが、権利の第一歩になるとき

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1.世界のリプロ・ニュース(2025年5〜7月) ◇◆◇────

■ イギリス:中絶の非犯罪化へ大きな前進

 2025年6月、英国下院は中絶に関する刑事罰の対象から女性を除外する法案を可決しました。これにより、自己中絶を行った女性が刑事訴追される可能性がなくなり、「中絶は合法であっても、依然として犯罪とされる」という制度上の矛盾がついに解消されることになります。

 この法改正の背景には、近年複数の女性が妊娠24週以降の中絶で起訴された事件があり、医療関係者や人権団体から制度の見直しを求める声が高まっていました。今回の決定は、女性の自己決定権を真に保障する重要な一歩として国際的にも注目されています。


■ アメリカ:中絶薬をめぐる政治的圧力

 トランプ政権下で、中絶薬ミフェプリストンをめぐる政治的な議論が激化しています。RFK Jr.が中絶薬の全国禁止を公言し、トランプ大統領も同様の方針を示唆する発言を続けています。

 こうした中で、ミフェプリストンの連邦認可そのものが危ぶまれる情勢となっており、アメリカ国内のリプロダクティブ・ヘルスケアに深刻な影響を与える可能性が懸念されています。


■ アメリカ・フロリダ州:未成年の「司法的免除」制度が違憲に

 親の同意なく中絶を希望する未成年に対し、裁判所の許可を得る「司法的免除」制度が違憲とする判決が下されました。この判決により、家庭内暴力や近親相姦などの問題を抱える少女たちの安全な中絶アクセスが事実上断たれることになり、児童保護団体や人権団体から強い懸念の声が上がっています。

 未成年の中絶アクセスをめぐる制度設計は、若年層の健康と安全に直結する重要な問題として、今後も議論が続くと予想されます。


■ ガイアナ:中絶合法化30年で劇的な成果

 南米ガイアナでは1995年の中絶合法化以降、安全な医療環境での中絶が普及した結果、中絶に関連する合併症が30年間で97%減少したことが明らかになりました。

 この統計は、中絶の合法化と適切な医療アクセスの保障が、女性の命と健康を守る上で決定的に重要であることを実証するデータとして、国際的な政策議論の重要な参考事例となっています。



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2.改憲派3分の2超え:リプロの権利への影響を懸念 ◇◆◇────

 2025年7月の参院選で改憲勢力が衆参両院で3分の2を超える議席を獲得しました。これにより憲法改正の発議が可能となり、特に憲法24条(家族に関する条項)への影響が懸念されています。

 現行24条は個人の尊厳と両性の平等を基本理念としていますが、これまでの改憲論議では「家族の絆」や「伝統的家族観」を重視する方向での修正が検討されてきました。こうした修正が実現すれば、個人の自己決定権よりも「家族」を優先する価値観が憲法に明記され、女性の身体的自己決定権や生殖に関する選択権が制約される可能性があります。

 国際社会ではリプロダクティブ・ライツは基本的人権として確立されており、憲法改正によってこうした国際人権基準から乖離すれば、日本の人権状況への国際的評価にも影響を与えかねません。

 憲法改正は最終的に国民投票で決まるため、市民社会による継続的な監視と、リプロダクティブ・ライツの重要性についての社会的理解を深める取り組みがより一層重要になってきます。



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3.『中絶薬完全ガイド 第二版』刊行のお知らせ ◇◆◇────

 2025年8月、『中絶薬完全ガイド 第二版 知る・考える・選ぶ』(塚原久美著/RHRリテラシー研究所刊)がAmazon Kindleにて刊行されました。電子版500円、ペーパーバック版1,800円での販売となります。

 本書では、2023年の薬剤承認以降の制度変遷や実地運用の状況を詳細に追跡し、価格やアクセスの課題、地域格差の実態などを網羅的に解説しています。さらに国際比較や具体的な実例を大幅に加筆し、エビデンスを充実させながら、「中絶薬があるのに使えない」という日本の現状を、医療・制度・文化の各側面から読み解いています。

 初版刊行から半年を経て明らかになった新たな課題や、読者からの質問を反映した実用的な情報も追加されており、医療関係者、支援者、フェミニスト活動家はもちろん、当事者自身が「選択する力」を持つための必携の一冊として、さらに充実した内容となっています。



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4.「わたしの体は母体じゃない」訴訟:次回は9月9日◇◆◇────

 任意の不妊手術を合法化することを求めた「わたしの体は母体じゃない」訴訟は、2025年4月23日の第5回口頭弁論を経て、同年7月30日には東京地裁にて非公開の「弁論準備手続」が実施されました。

 この手続きでは、被告(国)が提出した準備書面を踏まえ、争点の整理と今後の進行スケジュールについて裁判官、原告側・被告側の双方が協議を行いました。非公開で行われるため詳細な内容は明らかになっていませんが、訴訟の核心部分である憲法論や国際人権基準との整合性について、より具体的な議論が交わされたものと見られます。

 関係者によると、今後数回の期日で結審・判決が言い渡される可能性があり、日本初のリプロダクティブ・ライツをめぐる本格的な憲法訴訟として重要な節目を迎えつつあります。

 次回期日が決定しました:

第6回口頭弁論期日(通算7回目)日時:2025年9月9日(火) 16:00~16:15(予定)場所:東京地方裁判所・803号法廷期日内容:国が原告の求釈明に応答する書面を提出する予定です。

 可能な方は、ぜひ応援にかけつけてください。

 これまでに提出された訴状・準備書面等はこちらでご覧になれます。

 原告の想いや訴訟に至った経緯はCall4のサイトでどうぞ。 

 最新情報は「#わたしの体は母体じゃない」で検索してください。この訴訟への応援もぜひお願いします。



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5.Call4実話記事:司法と語りのギャップ ◇◆◇────

 中絶経験を持つ当事者による新たな実話記事が、Call4の特集ページに掲載されました。

 「中絶は、ひとりで決めた」と語る投稿者の声からは、制度や司法の議論では拾われにくい、個々の感情や葛藤、そして決断に至るまでの複雑な思いが率直に綴られています。法廷で争われる「権利」の議論と、実際に選択を迫られる当事者の心境との間には、まだまだ大きなギャップがあることを改めて実感させられます。

 こうした生の声を社会に届けることの重要性を考えさせられる貴重な記録です。制度を変えるためには、まず現実を知ることから始めなければなりません。

 記事はこちらでお読みいただけます。



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6.ボランティア・スタッフ随時募集中! ◇◆◇────

 RHRリテラシー研究所では、随時ボランティア・スタッフを募集しています!

 リプロに関する情報提供やイベント開催などの活動をしています。やりたいことがいっぱいあるのに、全然手が足りていません。関心のある方、意欲のある方、どうか力を貸してください。9月28日国際セーフアボーションデーに何か一緒にやりたい方、お待ちしています!

 ホームページ:https://www.rhr-literacy-lab.net/




編集後記

 『中絶薬完全ガイド』第二版の刊行を経て、あらためて「制度はあっても使えない」現実に目を向ける必要性を感じています。

 リプロの権利とは、選択肢が制度上あることだけでなく、それを自らのものとして「選べる」環境と情報があることなのだと思います。知ること、語ること、つながること。そうした一つひとつの積み重ねが、きっと次の扉を開いてくれるはずです。

©RHRリテラシー研究所 2025

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