リプロ・ニュース No.10
- Kumi Tsukahara
- 9月27日
- 読了時間: 6分
リプロ・ニュース No.10(2025年9月発行)
RHRリテラシー研究所
────◇◆◇コンテンツ◇◆◇────────────────────
1.国際:UNFPA世界人口白書2025—日本の低出生率とリプロの課題
2.国際:北京会議30周年—女性の権利の停滞を警告
3.米国:CRR、トランプ政権を提訴—中絶薬規制の不透明性
4.新刊案内:『産む自由/産まない自由 「リプロの権利」をひもとく』
5.国際:新しい中絶薬候補「ウリプリスタル酢酸塩」に注目集まる
6.米国:カリフォルニア州、中絶薬匿名処方の新法成立
7.日本:「わたしの体は母体じゃない」訴訟 国の回答先送り、10月に再審理へ
8.お知らせ:国際セーフアボーションデー関連イベント
9. 法人化のお知らせ
10. ボランティア・スタッフ随時募集中!
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1.国際:UNFPA世界人口白書2025—日本の低出生率とリプロの課題 ◇◆◇────
6月10日に発表されたUNFPA「世界人口白書2025」では、日本の低出生率の背景には「生殖に関する自己決定権の制約」があると警告を発しています。
・家庭や職場におけるジェンダー不平等・避妊薬利用の低さ、中絶薬アクセスの遅れ・国際比較で低い「自分の望むリプロライフを実現できている」割合
白書は、日本の少子化対策の限界についても指摘し、「出産や家族形成をめぐる権利を保障しないまま出生率だけを引き上げようとしても効果は限定的である」と強調しました。政策的にも、避妊・中絶アクセスや性教育、職場や家庭におけるジェンダー不平等の是正など、権利保障そのものに立ち返る必要性を訴えています。
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2.国際:北京会議30周年—女性の権利の停滞を警告 ◇◆◇────
9月22日、国連総会にあわせて開催された「北京会議30周年」首脳会合では、世界各国の指導者が女性の権利の進展の遅さに警鐘を鳴らしました。
・国連事務総長は「世界で女性嫌悪が広がっている」と警告・戦争・気候危機・テクノロジーの進展が女性の権利に圧力・世界の女性の3人に1人が性的暴力を経験・紛争地域に暮らす女性と少女は6億7,600万人で、過去30年で最多
リプロダクティブ・ライツを含むジェンダー平等の国際的後退が浮き彫りになっています。
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3.米国:CRR、トランプ政権を提訴—中絶薬規制の不透明性 ◇◆◇────
Center for Reproductive Rights(CRR)は2025年9月5日、米政権を相手取り訴訟を提起しました。理由は、中絶薬ミフェプリストンの「安全性再評価」をめぐる情報公開(FOIA)請求に政府が応じず、透明性を欠いているためです。
CRRは、FDAの規制判断に政治的圧力や非査読情報が影響した可能性を指摘。科学的エビデンスではなく政治的思惑が優先されていないかを問う重要な訴訟となっています。
行政の説明責任を追及するこの動きは、日本の薬事政策への示唆にもなります。
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4.新刊案内:『産む自由/産まない自由 「リプロの権利」をひもとく』 ◇◆◇────
9月17日、塚原久美著『産む自由/産まない自由 「リプロの権利」をひもとく』(集英社新書)が刊行されました。 2年の歳月をかけて書き下ろした本書は、日本社会における女性差別と「少子化」問題の本質を、リプロの権利という視点から解き明かす一冊です。政策論と個人の経験を架橋しながら、これからの社会に必要な議論を提示します。ぜひお手にとってください。
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5.国際:新しい中絶薬候補「ウリプリスタル酢酸塩」に注目集まる ◇◆◇────
研究団体Gynuityは、緊急避妊薬として世界で広く使われているウリプリスタル酢酸塩(UPA)を、ミソプロストールと併用する新たな薬剤中絶法として研究中です。メキシコでの試験では妊娠63日以内の97%で完全流産が確認され、既存の「ミフェプリストン+ミソプロストール」法と同等の有効性が示されました。今秋からは大規模な臨床試験が始まります。
UPAは日本では未承認ながら、一部の医師が「エラ」「エラワン」として緊急避妊薬用途ですでに導入しています。性交後72時間までの従来の薬に比べ、120時間(5日間)まで使えるのが特徴です。すでにジェネリック化も進んでおり、もし中絶薬としても使えるようになれば、薬の選択肢が広がり、価格も抑えやすくなる可能性があります。
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6.米国:カリフォルニア州、中絶薬匿名処方の新法成立 ◇◆◇────
カリフォルニア州のニューサム知事は2025年9月26日、患者情報を開示せずに医師が中絶薬を処方し郵送できる新法に署名しました。この制度は、患者と医師双方の匿名性と安全性を守りつつ、薬剤への迅速で確実なアクセスを可能にするものです。
同時に、患者データのプライバシー保護や薬剤アクセス保障を強化する関連法も成立。全米で中絶権が後退する流れに対抗する州レベルの前向きな取り組みとして注目されています。
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7.日本:「わたしの体は母体じゃない」訴訟 国の回答先送り、10月に再審理へ ◇◆◇────
2025年9月9日、東京地裁で第6回口頭弁論が開かれました。国は原告の求釈明に十分に答えず、裁判所は「10月14日までに回答」と期限を設定しました。次回期日は以下の通りです。
・日時:2025年10月29日(水)11:30~・場所:東京地裁803号法廷
本訴訟は、母体保護法の不妊手術要件が憲法13条・24条の自己決定権に違反するとして争われている日本初のケースです。10月の期日は審理の行方を左右する重要な節目となります。ぜひ傍聴・応援を!
詳しい情報やこれまでの訴状・準備書面は、Call4の特設サイトをご覧ください。
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8.お知らせ:国際セーフアボーションデー関連イベント ◇◆◇────
9月27日(金)19時~ SRHR for ALL!スタンディングアクション会場:東京駅行幸通り主催:SRHR for ALLアクション!/公益財団法人ジョイセフ/#なんでないのプロジェクト
9月27日(金)22時公開「産む自由/産まない自由、その現在地と未来」国際セーフアボーションデー2025記念トーク主催:NPA-TV▶ YouTube配信はこちら
9月28日(土)21時~ 国際セーフアボーションデー フリートークルーム@RHRリテラシー研究所主催:RHRリテラシー研究所▶ 詳細・申込(Peatix)
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9.法人化のお知らせ ◇◆◇────
RHRリテラシー研究所では、現在、一般社団法人化の手続きを進めています。法人化後は、日本のリプロダクティブ・ヘルス&ライツの環境を改善していくために、より事業を拡大していく予定です。
ニュース会員の皆さまは、特にお申し出がない限り、引き続きニュースをお受け取りいただけますが、今後、ルールの改訂があったときには改めてご案内いたします。
法人化後も、私たちの活動をどうぞ応援してください。
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10.ボランティア・スタッフ随時募集中! ◇◆◇────
RHRリテラシー研究所では、随時ボランティアを募集しています。リプロに関する情報発信やイベント運営など、多くの活動を進めていますが、人手が足りません。関心のある方はぜひご参加ください!
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編集後記
今回のニュースレターでは、国際機関による日本への指摘から始め、世界的な停滞、そして新しい研究や制度改革などの前向きな動きを紹介しました。国内では裁判や出版、イベントを通じて「リプロの権利」を社会に問い直す取り組みが続いています。知ること、語ること、つながることが、次の変化につながるはずです。ぜひ身近な人にもこのニュースを広めてください。(K)
©RHRリテラシー研究所 2025

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