top of page

リプロ・ニュース No.12(2026年1月発行)


一般社団法人RHRリテラシー研究所

────◇◆◇コンテンツ◇◆◇────────────────────

1.経口中絶薬は全体の3.4%にとどまる ――令和6年度・初の通年データが示す現実

2.年次報告:2025年の活動をふり返って

3.今後の予定:2026年に向けて  ――   中絶VCAT、IWAC、報告会、読書会

4.2026年の刊行予定

5.「わたしの体は母体じゃない」訴訟 ――  判決は3月17日

6.ボランティア・スタッフ随時募集中! 



────────────────────────────────────────


────◇◆◇

1.経口中絶薬は全体の3.4%にとどまる――承認から2年の現在地 ◇◆◇────


 厚生労働省が公表した「令和6年度 衛生行政報告例」によると、2024年度に全国で行われた人工妊娠中絶は127,992件でした。このうち、経口中絶薬による中絶は4,314件で、全体の約3.4%にとどまっています。

 妊娠週数別に見ると、妊娠7週以前の中絶は73,069件あり、そのうち経口中絶薬が用いられたのは3,114件(約4.3%)でした。妊娠8〜11週では、中絶総数47,330件のうち経口中絶薬は1,200件(約2.5%)となっています。経口中絶薬は妊娠初期に用いられる医薬品であることを踏まえると、その使用比率は依然として低い水準にあります。

 日本では2023年に経口中絶薬が承認され、2024年度は承認後初めての「通年データ」が示された年でもあります。しかし、この数字が示しているのは、経口中絶薬が日本の中絶医療において、いまだ限定的な選択肢にとどまっているという現実です。

 経口中絶薬を処方できる医療機関は全国的に少なく、地域差も大きい状況が続いています。また、服用方法や通院要件など、国際的な標準と比べて厳しい運用が課されている点も指摘されています。こうした制度や運用のあり方が、経口中絶薬の利用を広げにくくしている可能性は否定できません。


 承認の有無だけでなく、実際にどのような選択肢が、誰にとって利用可能なのか。今回明らかになった数字は、日本の中絶医療が抱える課題を具体的な形で示しています。


────◇◆◇

2.年次報告:2025年の活動をふり返って ◇◆◇────


 2025年は、出版活動と組織体制の両面で節目となる一年でした。

 9月には、代表理事塚原久美の単著『産む自由/産まない自由  ―「リプロの権利」をひもとく』が集英社新書より刊行されました。本書では、妊娠・出産・中絶・避妊をめぐる権利を軸に、日本の法制度や政策の歴史を整理し、海外との比較を通して、日本において「リプロダクティブ・ライツ」が十分に保障されてこなかった背景を検討しています。

 塚原久美著『中絶薬完全ガイド』も刊行しました。本書はRHRリテラシー研究所からの出版で、2025年2月に初版、7月に第二版を発行しています。制度変更や現場の動きを反映しやすいよう、Kindleおよびペーパーバックという形態を採用し、経口中絶薬に関する実務的な情報提供を目的としています。


 組織面では、2025年10月に、これまで任意団体として活動してきたRHRリテラシー研究所を一般社団法人化しました。個人ベースで行ってきた調査、情報発信、教育・啓発活動を、より継続的かつ対外的に行うための体制整備を目的としています。


────◇◆◇

3.今後の予定:2026年に向けて ◇◆◇────


 2026年も、研究・実践・国際発信を軸とした活動を継続していきます。

 2026年2月には、信州大学にて日本初となる中絶VCAT(Value Clarification for action and Transformation=行動と変革のための価値明確化)を実施する予定です。あわせて、同月末にバンコクで開催される第5回 IWAC(International Workshop on Abortion Care)に参加し、日本の中絶状況について報告を行います。

 3月には、2月に実施した中絶VCATおよびIWACでの報告内容に加え、現在進めているタイと日本の中絶状況の比較なども含め、安全な中絶をめぐる最新の情報を共有する報告会を実施予定です。タイと日本の事例を比較するなかで、両国に共通して「中絶のスティグマ」が大きな課題となっていることが明らかになってきています。報告会では、こうした課題を踏まえ、包括的性教育や中絶VCATが果たしうる役割についても共有する予定です。


 また、3月以降、RHRや中絶、性と権利をテーマとしたマンスリーのオンライン読書会を開始し、継続的な学びと対話の場を設ける予定です。


────◇◆◇

4.塚原久美の2026年の刊行予定 ◇◆◇────


 2026年には、共著として『みんなの性の「なぜ」』を 世界思想社より刊行予定です。性に関する素朴な疑問を手がかりに、基礎的な知識や考え方を整理する入門的な内容となる予定です。


 このほかにも、中絶をめぐる暴力構造の問題を扱う単著、中絶カウンセリングの実践と課題を整理した単著、アイルランドにおける中絶制度とその社会的背景を扱う共著など、複数の書籍の刊行を予定しています。詳細は、刊行が近づき次第あらためてお知らせします。


────◇◆◇

5.「わたしの体は母体じゃない」訴訟――弁論終結、判決は3月17日 ◇◆◇────


 2025年12月24日午後1時40分から、東京地方裁判所803号法廷にて、「わたしの体は母体じゃない」訴訟の第8回口頭弁論期日が開かれました。

 本期日では、裁判官の一名交代に伴い、冒頭で弁論の更新手続きが行われました。その後、国は第5準備書面を、原告はこれに対する反論として準備書面(9)をそれぞれ陳述しました。

 これをもって、双方ともに追加の主張および立証はないことが確認され、弁論は終結しました。

 裁判所は、判決期日を2026年3月17日(火)13時25分と指定しました。

 場所は東京地方裁判所・803号法廷です。

 本訴訟は、任意の不妊手術を制限する現行制度が、個人の身体の自己決定権を侵害しているかどうかが問われている、日本で初めての裁判です。判決がどのような判断を示すのか、引き続き注目されます。


 判決期日には、ぜひ傍聴にお越しください。

 これまでの経緯等は、Call4サイトをご参照ください。


─────◇◆◇6.ボランティア・スタッフ随時募集中! ◇◆◇────


 法人化後のRHRリテラシー研究所では、これまで通りボランティア・スタッフを随時募集しています。 リプロに関する情報発信やイベント運営など、多くの活動を進めていますが、人手が全く足りていません。関心のある方はぜひご協力ください!



────────────────────────────────────────

編集後記

 承認から2年が経っても、経口中絶薬は日本の中絶医療の中で十分に活用されていません。制度や運用、そして意識の問題が複雑に絡み合い、女性たちのリプロダクティブ・ヘルス&ライツは依然として大きな制約のもとにあります。来年は、VCATや報告会、読書会を通じて、こうした課題に具体的に向き合う場をつくり、行動にも移していく予定です。関心のある方は、ぜひご参加ください。(K)


©一般社団法人RHRリテラシー研究所 2026


 
 
 

コメント


bottom of page