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軽やかならぬ一歩前進-中絶薬は承認されたけど…

更新日:2023年6月14日

文 塚原久美


2023年5月16日、ミフェプリストン1錠とミソプロストール4錠のコンビ製品「メフィーゴパック」が日本で発売されました。2023年5月25日(木)から、日本女性財団の内田美穂医師のクリニックが日本で初めて「経口中絶薬」の取り扱いを始めました。


5月27日に確認できた限りでは、製造元であるラインファーマ株式会社のホームページに掲載されている取扱機関に11の病院・クリニックが加わりましたが、月曜日の朝、内田医師のフィデスレディースクリニックに続いた他のクリニックは全てリストから消えていました。


週末の取材時点では、これら10医療機関のホームページには中絶薬に関する詳細な情報が掲載されていなかったため、ラインファーマが詳細な情報を提供するまで掲載を見合わせることにしたか、各医院が準備不足を自覚して自主的に掲載を見合わせたものと考えられます。


いずれにせよ、中絶薬は保険外診療で公費負担もないため、女性は世界で最も高額な合法的手術による中絶に相当する費用を支払わなければなりません。内田医師のクリニックでは、内科的中絶も手術と同じ料金で総額99,000円に設定されています。


日本では、どのような中絶方法であっても、その前提として配偶者の同意書が法的に必要であることに変わりはありません。また、医師は経膣超音波検査で子宮内の妊娠を確認した後、通常6週目以降に薬を処方するため、患者は妊娠初期に中絶薬を服用することができません。


しかし、5月28日に開催された「#Action for Safe Abortion Japan」のオンラインイベントで講演したオーストリアのChristian Fiala博士によれば、中絶薬をかなり早い段階で服用することは、エコー検査ができない場合に有効で多くの場合成功するといいます。薬を飲んでも何も起こらなければ、子宮外妊娠を疑ってより高度な医療機関に行くべきだと彼は言います。超早期MAは、子宮外妊娠のスクリーニングにもなるのです。


日本の中絶患者は、医師の目の前で両方の薬を服用し、ミソプロストールを服用した後、妊娠が排出されるまで医療機関に滞在することを余儀なくされています。日本の産婦人科の多くは、中絶医療に特化した施設ではなく、妊婦、赤ちゃん連れの新米ママ、不妊治療、婦人科の患者を同じ待合室に収容することが多く、中絶患者にとっては居心地の悪い場所です。ところが現在、中絶患者はミソプロストールを服用した後、最大8時間(医師は8時間で9割が終わるというが、残りの1割はどうする!)病院に滞在することが義務づけられているのです。厚生労働省と日本産科婦人科学会は、この院内待機ルールは「当面」に限り、安全性が十分に確認されれば解除するとしているが、解除の基準は不明です。


また、日本産婦人科学会は、初日にミフェプリストンを随時、2日後の9時にミソプロストールを服用するために来院した患者は、胎嚢が排出されるまで院内に留まりますが、17時までに排出が完了しない場合は、翌日以降の手術となるとしています。しかし、有料で入院するのか、自己責任で帰宅させるのかは、明確に説明されていません。


日本の健康保険制度やいかなる公的資金も中絶費用をカバーしていないため、中絶薬を使って成功しなかった患者は、世界で最も高価な合法的手術による中絶に相当する費用を支払わなければなりません。人によっては、入院費、バックアップ手術費、複数回の通院費などをポケットマネーで支払わなければならない場合もあります。


「日本で中絶薬が承認されたということの意味は、女性の選択肢が増えたということです」と内田医師は語ります。「今後は日本女性が命の危険を冒して海外の中絶薬を自己判断で使用する必要もなくなりました。資格を持った医師が中絶の選択肢やリスクを説明したうえでその彼女にとってのベストな選択をできるようになったことは、『リプロダクティブ・ライツ』そいう視点からも日本が一歩前進したとも考えられます」。


しかし、女性自身が自分にとって最良の選択をすることを保障する「リプロダクティブ・ライツ」を日本が実現するには、もう少し時間がかかりそうです。





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