top of page

リプロ・ニュース No.6【更新版】

執筆者の写真: Kumi TsukaharaKumi Tsukahara

RHRリテラシー研究所 2025.01.31発行

 

────◇◆◇コンテンツ◇◆◇─────

1.トランプ政権再登場でアメリカの中絶の権利が危機に

2.日本における中絶アクセスは改善されるか

3.緊急避妊薬の販売状況、現場の声 

4.海外のリプロ関連ニュース:フランス・チリ・ウクライナの動向

5.  「わたしの体は母体じゃない」訴訟 次回公判は4月23日

6. ボランティア募集中

7.お知らせ No.5が届いていない方へ

────────────────────

  

────◇◆◇

1.トランプ政権再登場でアメリカの中絶の権利が危機に ◇◆◇────


 ロイター通信によると、2025年1月24日、ドナルド・トランプ大統領は大統領令を発し、以下の2つの国際的な反中絶協定へのアメリカの参加を再開しました。


メキシコシティ政策(グローバル・ギャグ・ルール):この政策は、海外の組織が中絶を提供または推進する場合、米国の家族計画資金を受け取ることを禁止する。1984年にロナルド・レーガン大統領によって初めて導入され、その後、民主党政権下で撤回され、共和党政権下で再導入されることを繰り返してきた。トランプ大統領は、マルコ・ルビオ国務長官に、「米国の納税者の資金が、強制的な中絶や不本意な不妊手術を支援または参加する組織やプログラムに資金提供しないようにする」よう指示した。


ジュネーブ・コンセンサス宣言:この宣言は、女性の健康と家族の強化を促進することを目的としており、世界中の多くの女性や少女の中絶アクセスを制限するものだと批判されている。この宣言は2020年にアメリカ、ブラジル、ウガンダ、エジプト、ハンガリー、インドネシアによって共同提案されたもので、現在では35以上の国が署名している。トランプ政権は、宣言の目的の一つとして「すべての段階での生命の保護」を挙げている。


 これらの動きに対し、民主党やプロチョイスの人々は、政策が他の形態の医療アクセスを妨げ、海外の非政府組織が米国の資金を受け取ることを阻害すると主張しています。また、これらの決定は、女性や少女が教育を完了し、労働力に参加する能力を制限することで、ジェンダー平等の推進に逆行するとも懸念されています。

 さらに、トランプ大統領は、米国内での中絶に対する連邦資金の使用を禁止するハイド修正条項に関連する大統領令を発し、前任者であるジョー・バイデンの中絶サービスを保護するための2つの大統領令を撤回しました。プランド・ペアレントフッドは声明で、「この大統領令は即時の影響を及ぼすものではないが、低所得者層への中絶アクセスを否定するトランプ政権の姿勢を強調している」と述べています。

 

 

────◇◆◇

2.日本における中絶アクセスは改善されるか ◇◆◇────


 日本では2023年に経口中絶薬が承認されましたが、その普及はまだ十分ではありません。現在、処方可能な医療機関は全国でわずか240施設(2024年12月時点)にとどまり、特に地方ではアクセスが困難な状況が続いています。

 厚生労働省は、経口中絶薬の適正使用に関する指針の見直しを進めており、2025年以降、2剤目(ミソプロストール)を自宅で服用できる仕組みを導入する可能性が議論されています。日本産婦人科医会は、この変更について地域格差や医療機関の負担増を懸念し、安全性の確保が必要であると主張しています。一方、日本産婦人科学会は、適正な情報提供と緊急対応体制の整備を求めています。

 このような状況のなか、2025年1月28日にオンラインで開催されたASAJのイベント「日本の経口中絶薬の使用ルールを徹底分析-『留意事項の一部改正』を受けて」では、2剤目の自宅服用が実現した場合に、排出物を医療機関に提出する義務が課される可能性について懸念が示されました。そのような提出義務付けは医学的には何の意味もなく、参加者の間では、「女性に対して懲罰的な措置だ」と憤る声も上がりました。今後の議論の行方が注目されます。

 

 

────◇◆◇

3.緊急避妊薬のアクセス改善に向けた動き◇◆◇────


 日本における緊急避妊薬のアクセス改善に向けた取り組みとして、2023年11月より、厚生労働省の委託事業として一部の薬局で緊急避妊薬の試験的販売が開始されました。当初、全国で145の薬局が参加していましたが、2024年秋には約340店に拡大しています。この試験販売は、医療機関の受診を経ずに、薬局で緊急避妊薬を購入できる仕組みを検証するものです。

 試験販売では、購入希望者が研究への参加に同意し、薬剤師との面談やアンケートに協力する必要があります。16歳以上の女性が対象で、16~17歳の未成年は保護者の同意と同伴が求められます。

 しかし、「緊急」に必要とされる薬へのアクセスが制約されることで、迅速な対応が難しくなるとの懸念もあります。試験販売の薬局は全体の0.3%にとどまり、地域によっては入手が困難な状況が続いています。政府は試験結果をもとに、今後の制度化や全国展開を検討するとしています。

 

 

────◇◆◇

4.海外のリプロ関連ニュース:フランス・チリ・ウクライナの動向◇◆◇────


 フランスでは、2024年3月に憲法改正が行われ、中絶の権利が憲法で正式に保護されることとなりました。この改正により、どの政権であっても中絶の権利が法律で制限されることのないよう保障されることになります。

 また、チリでは、2024年6月にガブリエル・ボリッチ大統領が一般教書演説で中絶の権利を拡大する法案を提出する意向を表明しました。現在、チリではレイプ、母体の危険、胎児の致命的異常の場合にのみ中絶が認められていますが、新たな法案はこれをさらに拡大するものとして注目されています。

 同年10月、在ウクライナ日本大使館の時田裕士公使は、ロシア侵攻によりウクライナのSRH(性と生殖の健康)サービスが不足し、多くの地域でアクセスが困難になっている現状を指摘しました。その中で、日本政府の支援による2つのパイロット・プロジェクトが成功したことを評価し、ウクライナの医療機関の存続と復興に貢献できることを誇りに思うと述べました。

 海外支援はもちろん重要です。しかし、日本政府は同時に国内の女性のSRHサービスを充実させるための努力も払うべきでしょう。

 

 

────◇◆◇

5. 「わたしの体は母体じゃない」訴訟 次回公判は 4月23日◇◆◇────


 任意の不妊手術を合法化することを求めた「わたしの体は母体じゃない」訴訟は、2024年6月12日、8月28日、11月1日、本年1月29日と、これまでに4回の口頭弁論が行われました。次回公判の予定は以下の通りです。         

 

第5回口頭弁論期日

日時:2025年4月23日(水) 14:00~14:30(予定)

場所:東京地裁・第803号法廷

期日内容:被告(国)が提出した第2準備書面に対して原告が反論を行う予定です。

期日報告会:期日終了後、地裁ロビーにて簡易な報告会を行う予定です。

 

 可能な方は、ぜひ応援にかけつけてください。


これまでに提出された訴状・準備書面等は以下でご覧になれます。

 

原告の想いや訴訟に至った経緯はCall4のサイトでどうぞ:

最新情報は「#わたしの体は母体じゃない」で検索してください。

 

Youtubeの動画もぜひご覧ください。 

#わたしの体は母体じゃない 訴訟〈第1回期日報告会〉


中絶についてもっと話そう㊴【緊急イベント】「わたしの体は“母体”じゃない」訴訟-原告・風音さんに聞く「わたしが訴訟を起こした理由(わけ)

 

 この訴訟は女性のリプロの権利を争う日本で初のものです。みんなで応援していきましょう。

 寄付や応援のコメントもぜひお寄せください! 

 

 

────◇◆◇

6.ボランティア・スタッフ随時募集中!◇◆◇────

 RHRリテラシー研究所では、随時ボランティア・スタッフを募集しています! 

リプロに関する情報提供やイベント開催などの活動をしています。やりたいことがいっぱいあるのに、全然手が足りていません。関心のある方、意欲のある方、どうか力を貸してください。何か一緒にやりたい方、お待ちしています!!


 

 

RHRリテラシー研究所(通称リテ研)について

 リテ研は、「リプロダクティブ・ヘルス&ライツ(性と生殖に関する健康と権利:略RHR)」の知識と理解(リテラシー)を広める活動を行っている任意団体です。

  RHRは元々女性の健康運動から登場してきた概念で、国際社会では1990年代から広く知られるようになりました。最近では、「セクシュアル・ヘルス&ライツ」という概念も加えてSRHRと表記されることもよくありますが、私たちのグループでは「リプロダクション(妊娠や出産)」の機能にまつわる健康と権利に特に注目しています。

 国際社会では、RHRは今や「個人の人権」の重要な一部であると認識され、この人権を保障する義務は国家に課されています。しかし、日本では、本来、国が個人に対して保障すべきRHRにまつわるヘルスケア(緊急避妊薬を含む避妊や中絶、安全で尊厳が守られアクセスしやすい妊娠・出産、任意の不妊手術など)の情報と手段がほとんど提供されていません。まずはリプロ関連の知識をつけていきましょう。そのために、今月も「リプロ・ニュース」をみなさまの元にお届け致します。

 

 

7.お知らせ No.5が届いていない方へ

 「リプロ・ニュース」のメール受信を希望しているのに、昨年12月30日に発行したNo.5が届いていない方がもしいらっしゃるようでしたら、どうかご一報ください。折り返し送信いたします。

 なお、No.5はRHRリテラシー研究所ホームページでもお読みいただけます。

 

 ご不便をおかけして申し訳ありませんが、これからもリプロ・ニュースをよろしくお願い致します。

 

 

編集後記

 昨年は様々な出会いと別れを経験し、まったく新しい分野へのチャレンジも開始しました。正月早々のPCトラブル続きで、この1か月間てんやわんやでしたが、オンライン研修の収録や複数の本の原稿執筆をどうにかこうにか終えて、一息ついているところです。今年から来年にかけて単著、共著がいくつか刊行される予定です。お楽しみに!(K)




 

閲覧数:14回0件のコメント

最新記事

すべて表示

Comentarios


bottom of page