RHRリテラシー研究所 2024.7.3発行
────◇◆◇コンテンツ◇◆◇─────
1. 「リプロ・ニュース」No.2発行のごあいさつ
2.「わたしの体は母体じゃない」訴訟 初公判の報告と次回期日
3. 書評載りました! 翻訳『ジェーンの物語 伝説のフェミニスト中絶サービス地下組織』
4. ジェンダーギャップ指数2024年
5. ラインファーマ社が2つの調査結果をホームページで公開
6. ボランティア募集中
編集後記
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1.「リプロ・ニュース」No.2発行のごあいさつ◇◆◇────
RHRリテラシー研究所は、「リプロダクティブ・ヘルス&ライツ(性と生殖に関する健康と権利:略RHR)」の知識と理解(リテラシー)を広める活動を行っている任意団体です。予定より少し遅れましたが、メルマガ「リプロ・ニュース」No.2を発行します。
RHRは元々女性の健康運動から登場してきた概念で、国際社会では1990年代から広く知られるようになりました。最近では、「セクシュアル・ヘルス&ライツ」という概念も加えてSRHRと表記されることもよくありますが、私たちのグループでは「リプロダクション(妊娠や出産)」にまつわる健康と権利に特に注目しています。
RHRは、現在では「個人の人権」の重要な一部であると認識され、国にこの人権を保障する義務が課されていますが、日本では、本来、国が個人に対して保障すべきRHR関連のケア(避妊や中絶のみならず安全で尊厳が守られアクセスしやすい妊娠・出産、不妊手術なども含む)の情報と手段がほとんど提供されていません。まずはリプロ関連の知識をつけていきましょう。そのために、今月も「リプロ・ニュース」をみなさまの元にお届け致します。
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2.「わたしの体は母体じゃない」訴訟 初公判の報告と次回期日◇◆◇────
母体保護法は、望まない妊娠をした人が安全な中絶を自己決定する権利を奪うのと同時に、望まない妊娠をしないようにするための自己決定——安全で確実な避妊(緊急避妊を含む)や不妊手術を選ぶこと——に介入し、制限をかけています。
旧優生保護法は、障がいをもつ人々などに強制的な不妊手術や中絶手術を行うという形での人権侵害をしてきました。その問題性は知られるようになりましたが、一方で、障がい者差別的な条項が削除された現在の母体保護法でさえ、個人が自分のために中絶や不妊手術を選ぶことは制限されていることはまだ知られていません。子を妊娠しうるからだを持つ人々を潜在的な「母体」とみなし、「産むこと」に誘導しようとする国の姿勢のために、生きづらさを感じている人々がいることに目を向ける必要があります。
「わたしの体は母体じゃない」訴訟の第1回 公判は、6月12日に東京地裁・第803号法廷で終了しました。
#わたしの体は母体じゃない 訴訟〈第1回期日報告会〉Youtubeで視聴可能です。
どんな体に生まれついた人であろうとも、第三者の思惑で生き方を狭められたり強制されたりするのはおかしい……なのに日本の法律では、「わたしの体はわたしが決める」という単純なことが、これまでも今も認められていません。「産まない選択」は、望まない妊娠を中絶する場合のみに関わる問題ではありません。「望まない妊娠」をしないため、または自分らしく生きていくために、確実で安全な避妊手段や不妊手術を切望している人々に対して、法的かつ医療的に制限がかけられている現状は不当であり、人権侵害=リプロの権利の侵害にあたります。
自分のからだは「産むためにだけ」にあるわけではありません。自分の人生を自分らしく生きるためにも、「わたしの体」について自分で決められることは、基本中の基本、リプロの権利の一つなのです。
「不妊手術」を求める当事者だけではなく、女性のリプロの権利を信じるすべての人々にこの訴訟をぜひ応援してほしいです。
※原告のメッセージ※
「100人いたら100通りの幸せがある」
「誰かの期待に応えることに力を入れ過ぎず、自分らしく生きていくのでいい」
「みんなと違って全然構わない」
「誰かを幸せにするためには自分を幸せにしなければならない」
「自分を大切にする方法をみんなが考えられるように」
「だれもが自分のために生きられる社会を」
原告の想いや訴訟に至った経緯はCall4のサイトでどうぞ:
寄付や応援のコメントも大大歓迎です! 原告の陳述書もサイトでお読み頂けます。
原告を応援するために、ぜひ裁判の傍聴にも足を運んでください。
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第2回 公判
8/28 15:00~ @東京地裁・第803号法廷
※ 初回期日とは異なり、意見陳述などはありませんが、多くの人が女性の自己決定権に関するこの裁判に関心を持っているということを司法に示すことが、社会を変えることに繋がりますので、足を運んでいただけますと大変大きな力になります。
最新情報は上記call4ウェブサイトに加えて、
Instagram @ledge_law または @call4_jp
Twitter @LEDGE_law または @CALL4_Jp
#わたしの体は母体じゃない で検索🔎
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関連記事:
「子どもを産まない権利も認めて」戦時下から続く、原則禁止の不妊手術要件は違憲と提訴 (東京新聞)
母体保護法の不妊手術要件「違憲」と提訴 「自己決定権の一つ」主張 (朝日新聞 有料記事)
In Japan, a legal fight for the right to sterilization surgery(Japan Times)
In Japan, These Women Want to Opt Out of Motherhood More Easily(New York Times)
Five women launch lawsuit in Tokyo for right to undergo voluntary sterilisation in Japan (ABC News)
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3.書評が出ました! 『ジェーンの物語 伝説のフェミニスト中絶サービス地下組織』ローラ・カプラン著 塚原久美訳◇◆◇────
日経新聞(6/23 社会学者 水無田気流氏)
「ようやく昨年経口中絶薬が承認されたが、「配偶者同意」が必要など女性の自己決定権の点で問題は残る。日本でこそ、今読むべき本だろう。」
共同通信(6/8 ノンフィクションライター、翻訳家 実川元子氏)
「日本では未だに正しい性知識を身につけることが難しく、若い世代はネット上の情報に振り回されている。自分の体、特に性と生殖について知ることが自分の人生をコントロールする力になる、と主張する本書は、今の日本で読まれるべきではないだろうか。」
西日本新聞(6/7 記者 平原奈央子氏)
「自分の体は自分で決める」「ごく普通の女性たちが 力を合わせ 社会を変えようとした軌跡を知ってほしい」
出版社 書肆侃侃房(しょしかんかんぼう)のサイトもご覧ください。
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4.ジェンダーギャップ指数2024年◇◆◇────
6月12日、世界経済フォーラム(WEF)が毎年公表しているジェンダーギャップ指数の結果が発表されました。この指数は世界各国のジェンダー平等の度合いを数値化したもので、男女が完全に平等な状態を100%とした場合の達成率の数値で国別ランキングが付けられます。
今回、日本は対象146カ国中118位(66.3%)と、前年の125位から7つ順位を上げました。主に「政治的エンパワーメント」の側面での改善(特に、参院議員に占める女性比率の増大)によるものとされていますが、全体的な平等指数の改善は2006年の調査開始以来、延び悩んでいます。G7各国の中では断トツの最下位なのですが、それだけではなく2006年の調査開始以来、日本の指数にはほとんど改善が見られません。
特に日本が他国より改善が遅れているのが「経済」(53.6% 128位)と「政治」(11.7% 115位)の領域です。先進7カ国(G7)ではずっと最下位にとどまっているばかりか、全対象国の「平均値」より下回っています。
朝日新聞の「【ジェンダーギャップ指数】日本、2024年は世界118位で低迷続く 政治・経済に課題」という記事では、2006年に始まったWEFの統計からこれまでの日本のジェンダーギャップ指数にほとんど改善が見られないことを示す棒グラフを掲載しています。ぜひご参照ください。
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5.ラインファーマ社が2つの調査結果をホームページで公開◇◆◇────
ラインファーマ社のホームページ(https://www.linepharma.co.jp/)の「お知らせ」のコーナーに、2024年4月2日付で「市販後直後調査結果のお知らせ(以下、市販後調査結果)」と同5月16日付で「人工妊娠中絶に関する全国調査結果(以下、中絶調査結果)」が掲載されました。
市販後調査結果では、メフィーゴ®パックが発売された令和5年5月16日から半年後の令和5年11月15日までに、副作用の報告が11例14件あり、そのうちわけは膣出血3件、下腹部痛3件、悪心2件、嘔吐4件、発熱1件でしたが、いずれも非重篤であったとされています。なお、全体の使用回数は示されておらず、「自発報告の為、頻度は算出できません」とされています。
中絶調査結果では、2024年3月22~25日に行われたインターネットリサーチにより16~49歳の女性2000人の回答を取りまとめた結果、中絶方法の認知について、手術による中絶の認知割合は65%であったのに対し、薬剤による中絶の認知割合は29%と低い結果になりました。中絶の日本における承認状況についても、手術による中絶は86%が承認されていると思っていましたが、薬剤による中絶については27%しか承認されていると認識していないことが明らかになりました。このように、中絶やその方法に関する知識が限られている中で、仮に中絶せざるを得なくなった場合には40%がどの中絶方法を選ぶか「わからない」と回答しました。
なお、中絶に対しては、「中絶後のからだへの影響が心配」と考える割合が82%と非常に多い中、「自分にはあまり知識がない」は70%、「情報が少ないと思う」は79%にのぼり、情報の周知が不足していることが示されました。
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5.速報「旧優生保護法は違憲 強制不妊、国に賠償責任」◇◆◇────
同新聞によると、「大法廷は旧法が『意思に反して身体への侵襲を受けない自由』を保障した憲法13条、法の下の平等を定めた憲法14条に違反すると指摘。96年に障害者差別に当たる条文が削除されるまで『国は政策として障害のある人を差別し、重大な犠牲を求めてきた』とし、除斥期間の経過を理由に国が賠償責任を免れることは『著しく正義・公平に反し、到底容認できない』と述べた」としています。
RHRリテラシー研究所の塚原は札幌高裁での公判時に出した意見書の中で、2014年に国連の複数の機関(国連人権高等弁務官事務所、UN Women、国連合同エイズ計画、国連開発計画、国連人口基金、ユニセフ、WHO)が発行した「強制的、強要的、その他の非自発的な不妊手術をなくすために:合同声明」において、強制不妊手術は明確に「拷問」と評価されていること、国連拷問禁止委員会は、一般的意見3において拷問の「救済措置」を定め、拷問による被害が、時の経過によって緩和されるものではなく終生続くという人権侵害の性格から、時効は適用されるべきでないことを明確に提示していることを指摘しています。(https://x.gd/VOmxS)
いずれにしても、今後の旧優生保護法による強制不妊手術裁判では、「除斥期間」を理由に国が責任逃れをすることは困難になったと言えるでしょう。
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6.ボランティア・スタッフ随時募集中!◇◆◇────
RHRリテラシー研究所ではボランティア・スタッフを募集しています!
リプロに関する情報提供やイベント開催などの活動をしています。関心のある方、意欲のある方、どうか力を貸してください。
編集後記
第2号の発行が遅れた言い訳にすぎませんが、じつは5月の連休明け以来、家族の病気に振り回されてきました。10万人に1人という珍しい病気で、手術さえすれば当面の症状は改善されると分かっていたのですが、手術できる医療機関が国内に数カ所しかありません。検査のために一日かけて車で往復し、その翌週、三泊四日の予定だった手術に連れて行って待機していたら、手術自体は成功したものの、思わぬ副反応のために一時はICUに入るほど重篤な状態となり、入院も一週間伸びてしまいました。PCとインターネット環境さえあれば仕事はできると覚悟を決め、心細がる患者に寄り添うため安ホテルを転々としながら毎日見舞い、先週末無事に自宅に連れ帰ることができました。今は家族も小康状態を取り戻し、私自身の仕事の方も少しずつ遅れを取り戻して、ほっとしているところです。遅れた分、旧優生保護法の最高裁判決を滑り込ませることができたのが、怪我の功名でしょうか。(K)
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